第28回「注意機能検査」 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第28回「注意機能検査」

平成29年12月21日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生。
テーマは「注意の検査、その他の検査」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告致します。

1.注意機能

~注意機能の分類と症状~

注意機能は、全般性注意と方向性注意に分類される。全般性注意が障害されると、「ぼんやりした(inattention)状態」「転導性(distractibility)の亢進」「運動行為の維持困難(impersistence)」「反応抑制障害(disinhibition)」などが観察される。一方、方向性注意が障害されると半側空間無視といわれる状態となる。
重度の注意障害を呈すると、テレビや会話等の複数刺激がある環境内で競合する事柄が生じると、処理に時間を要したり、容易に気が散りやすくなる。入力が限定されるか単純化されない限り、刺激に気をつけることができない。
軽度の注意障害では、通常の作業遂行は可能だが、以前よりも長く時間がかかり誤りも見つかるようになる。そのため、以前よりも再確認の頻度が増加することで発見される。
Williams James(1890)によると、注意とは、同時に現れる物や思考の中から、ある特定のものだけを入手する心の動きであり、意識を局所化、集中させる事が本質であると述べている。例えば、同じ番組でも環境音のある自宅で見る場合と映画館で見る場合とでは映画館で見る場合の方が集中して観る事ができる。いわばスポットライトをあてる機能であるともいえる。
注意機能は、意識の局所化・集中だけでなく分配の機能をも持つ。注意の分配とは、2つ以上の課題を同時に遂行する場合に必要となる。その際は、行っている複数の作業の中で最も重要な課題に注意が多く振り分けられる。また、注意には、ある認知活動を一過性に中断し、他のより重要な情報に反応し注意を変換する機能(switching attention)もある。
一方、ある一定時間物事に集中している状態を覚醒度という。覚度が障害されると、課題の成績が低下してしまう。また、課題の遂行中に突然その成績が短時間低下することもある。
注意とは選択性と制御(switching,divided)と覚醒度(alertness,or sustained attention)が複合して機能している。

~注意機能を評価する検査法~

① WAIS(数唱)
② Trail making task(TMT)
③ Stroop task
④ Paced Auditory Serial Additions Task Clinical Assessment for Attention(PASAT)
⑤ CAT

~WAIS数唱~

読み上げられる数桁の数字を記憶し復唱する課題であり、持続して注意が可能かどうかの評価が行える。また逆唱では、単純に集中力の有無だけではなく操作も加わるためワーキングメモリの検査としても使用されている。

~Trail making task(TMT)~

この検査は2つの項目からなる。

PartA:1~25までの数字を順番に線で結んでいく
PartB:数字と平仮名を交互に結んでいく

Aは単純に数字だけを追う課題だが、Bでは妨害刺激を排除し、自身を抑制しながら目指すものだけを選択できるかどうかの評価が行える。AとBで差がある場合、本来抑制しなければならないものに囚われてしまうため、結果的に時間がかかるという事が分かる。

~Stroop Test~

この検査は2つの項目からなる。

Part 1:黒文字で書かれた色の名前を読む
Part 2:文字がカラーのインクで書かれている色の名前を読む

漢字に惑わされず色を言うことができるか否かを評価する。遂行機能との関係も深い。

~Paced Auditory Serial Additions Task Clinical Assessment for Attention(PASAT)~

聞こえてくる数字を足していく課題であり、前の数字と次に出た数字を足す。その際に、自身の反応を抑制し、次に読み上げられる数字に集中する必要がある。そのため、本検査では聞こえてくる音の理解能力、抑制、注意の切り替え能力の評価が可能である。

~CAT~

これまで述べてきた検査を組み合わせて総合的な評価ができる検査である。中でもCPTと呼ばれる検査では、ある一定の教示のもとに単調な反応課題を持続して行う。例えば、本来反応しなければならない条件の時に反応できなかった場合は持続性注意の低下が示唆される。一方、違ったターゲットに反応してしまった場合は、教示の忘却や不注意、衝動的な要因等他の問題が疑われる。

2.失行

~失行とは~

失行とは、
1)麻痺や失調がない
2)了解障害や認知障害がない
3)課題の理解障害がない
のにも関わらず指示された運動を誤って行ってしまう状態を指す。また、手を上げたり、口をとがらせたり、櫛等の物品を手渡されても適切に使用することができない等、明らかに他の意味ある動作と取り違えた行動をとってしまう状態をいう。

~失行の検査法~

失行の検査法として、物品を使用しないものと物品を実際に使用して評価するものとがある。物品を使用しない簡単な運動を伴う検査(手をあげる、口をとがらす)、物品なしの慣習的コミュニケーション運動(軍隊式敬礼、おいでおいで)、物品なしに物品を使う真似をする(金槌、鋸の使用の真似)、実際の物品使用(お茶を淹れる等いくつかの手順に分けられる一連の運動)が挙げられる。

3.失認

~失認とは~

一次感覚は保たれているが、視覚的に見たものが何か分からないという状態を指す。Lissauerの分類によれば統覚型と連合型に分類される。

~失認の検査法~

7項目からなる高次視知覚検査が挙げられる。

1 視知覚の基本機能
2 物体画像認知
3 相貌失認
4 色彩認知
5シンボル認知
6視空間の認知と操作
7地誌的見当識

Luncheon seminar の様子

 

以上、武田克彦先生に「注意機能の検査法」をテーマにご講演頂いた内容をご報告します。
次回は、平成30年1月11日にご講演して頂く予定となっております。

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