第27回「遂行機能検査」 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第27回「遂行機能検査」

平成29年11月16日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生テーマは「遂行機能の検査法」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告致します。

~遂行機能と遂行機能障害~

遂行機能は、実生活の中にある大量の情報を取捨選択し、試行錯誤を続けながらも長期的な目標を目指して日常的な課題をこなしていく能力をいう。行動の選択、計画、実行、モニター、修正など多くのステップがある。遂行機能障害では前頭葉の損傷により実生活において目的にかなった行動をとる能力が低下する。

~遂行機能障害の症状~

未来の行動を計画したり定職につき続けたりする能力がない、自分自身に対し肯定的な評価を下す傾向、きちんとした礼儀を行うが紋切り型な点に共通性がある。行動学的に見ると、順応性の欠如、アイディアの欠如、思慮分別のない決断、決断力の欠如、自己修正の障害、未熟な行動、保続、機転のきかない行動、無気力、会話の欠如、精神的努力の欠損などが言われている。

~日常活動との親近性からみた遂行機能評価法~

1. 検査的検査:Wisconsin Card Sorting Test、Stroop test、Word Fluency、FABなど
2. ゲーム的検査:Gambling Task、BADSなど
3. 行動の評価:DEX質問用紙

~Wisconsin Card Sorting Test(WCST)~

カードの分類課題で、概念の形成、セットの切り替えと維持、学習能力などを評価するもので、遂行機能を見る上で特異度が高いとされる。検者には分類の基準は明かされず、結果のフィードバックのみ与えられる。基準は変動するため、その都度分類の変更を自分で考えることが必要であり、実生活とのある種の類似性がある。変化する予期せぬ出来事への反応に関する、認知的抽象性および柔軟性を必要とする。実際、前頭葉障害患者はこの検査で異常と判定される率が高い。だが、成績には前頭葉損傷の患者間でもかなりの変動がある。また、前頭葉障害以外の脳障害や正常者でも検査結果が異常とされることがある。

~Stroop Test~

この検査は2つの項目からなる。

・Part 1:黒文字で書かれた色の名前を読む
・Part 2:文字がカラーのインクで書かれている色の名前を読む

前頭葉が障害されていることで抑制が困難となる。また、注意機能との関係も深い。

~Frontal Assessment Battery(FAB)~

FABはベッドサイドでの簡便な評価方法である。1.類似性、2.言語の柔軟性、3.運動プログラミング、4.干渉指示の実行、5.行動の抑制、6.強制把握の6つの検査項目からなる。

~Gambling Task~

前頭眼窩部障害に鋭敏な検査である。この検査により、報酬予測場面における意思決定の障害や衝動性が評価できる。

~Behavioral Assessment of the DysexecutiveSyndrome(BADS)~

この検査は、自ら目標を設定し、計画を立て、実際の行動を効果的に行う能力を判定することができ、遂行機能障害を日常生活での障害に近い形で評価できる。
評価項目は、六種の下位検査と1 枚の質問表からなっている。下位検査は以下の項目について調べることができる。

1. ルールの変更に対応できるか
2. 簡単な創意工夫が可能か
3. 目的にあった正しい戦略が立てられているか
4. よく知られた作業の所要時間の目立がついているか
5. 与えられた規則に基づく順路決定能力があるか
6. 複数の作業の進行を与えられた規則に基づいて監視できるか

~ハノイの塔~

実生活における目的遂行に伴う迂遠な作業をある程度再現している課題であり、前頭葉障害患者の成績は悪い。ただしこの検査は課題がやや難しく、理解障害や知能低下のある場合も成績は悪くなるため、結果の解釈には注意を要する。

~Trail Making Test(TMT)~

前頭葉の外側面の障害で特にPartBの成績は低下するという報告がある。特にPartBは、年齢・教育程度・知能などの影響を受け、カットオフを決めるのは難しいとされている。また、PartBがPartAの3倍の時間を要するとカテゴリーセットの転換機能の障害が示唆されるが、他の検査の標準的データなどと総合的に判断する必要がある。

Luncheon seminar の様子

 

以上、武田克彦先生に「遂行機能の検査法」をテーマにご講演頂いた内容をご報告します。
次回は、平成29年12月21日にご講演して頂く予定となっております。

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