第46回 認知症をきたす疾患 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第46回 認知症をきたす疾患

令和元年6月20日、桔梗ヶ原病院リハビリテーション研修会Luncheon Seminarを開催しました。講師は当院リハビリテーション科の武田克彦先生。テーマは「認知症をきたす疾患」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告します。

 

日本の認知症の7割を占めるといわれるアルツハイマー病は、急激に発症し、認知機能の変動を認める。最初から歩行が障害されているのが特徴である。麻痺があるものはアルツハイマー病ではないといわれている。アルツハイマー病の次に多い認知症として、日本では血管性認知症がある。血管性認知症とは血管障害があって生じている認知症である。その他にも、レビー小体認知症や前頭側頭葉型認知症がある。

 

○血管性認知症

前頭葉の機能障害により、実行機能障害、アパシー(無為・無感情)、思考緩慢などを認める。早期から構音障害や片麻痺といった身体症状を伴うことが多い。

臨床型には「皮質型」があり、大脳皮質による失語、失行、失認などの皮質症状と前頭葉機能障害を認める。段階的な発症、増悪を示す。多発梗塞性認知症とも呼ばれる。

1)皮質下血管性認知症

小血管病変(small vessel diseases)による多発性ラクナ梗塞やびまん性白質変性により、アパシー、実行機能障害、思考緩慢、歩行障害、尿失禁などを呈する。段階的な増悪を示す場合と、緩徐に発症し緩徐に進行する場合とがある。Binswanger病と多発小梗塞(ラクナ)性認知症が含まれる。

2)strategic infarction型

単一梗塞が、視床、前脳基底部、帯状回などの認知症発現に戦略的な部位に生じたために認知症を呈する場合である。記憶障害、無為・無感情、自発性の低下、保続などがある。

 

○レビー小体型認知症

レビー小体が神経細胞内に沈着し、認知症をはじめとして各種症状を呈する。レビ-小体が全身に沈着する疾患を総括的にレビ-小体病と呼ぶ。この病変は中枢神経系だけでなく、自律神経系、消化器、心筋、皮膚などにも及ぶ。レビ-小体病にパーキンソン病、レビ-小体型認知症、多系統萎縮症が含まれる。これはどの臓器に病変が蓄積するかによって決まる。

大脳皮質、辺縁系、脳幹の黒質などに多数のレビ-小体を認める。レビ-小体は神経細胞内にエオジンで染まる円形の封入体で、蓄積物質はα-シヌクレイン凝集体である。神経細胞の脱落、大脳皮質などの萎縮もみられる。診断として、進行性に認知機能低下(認知症)がみられる。さらに、覚醒レベルの変動(認知変動)、幻視(誰かがいる。子供がみえるなど)。パーキンソン症状、レム睡眠行動異常がみられる。検査所見としては、ドパミントランスポーターSPECTでドパミン系の異常所見がある。MIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下などが指標的バイオマーカーである。これらの組み合わせによって診断される。

 

 

○前頭側頭型認知症

前頭側頭葉に限局性に萎縮を呈し、言語障害と行動・感情の障害を主張とする疾患の歴史として、Arnold Pickが前頭・側頭葉の萎縮を呈して進行性に特異な言語症状および行動・感情障害を示した症例を報告している。その後、嗜銀性細胞内封入体(Pick球)が記載されPick病と名付けられた。しかし、病理診断的基準に議論があり、1996年に前頭側頭葉変性症の概念が提案された。

 

症状として、社会的対人行動の早期からの障害、早期からの自己行動統制の障害、病識の欠如を認めているが、日常の記憶は比較的保たれている。前頭側頭型認知症として、以下の3つに分かれるが最初に侵される領域が異なるからと考えられる。

 

  1. 行動障害型前頭側頭型認知症
  2. 前頭葉の眼窩面の障害に基づいている。社会不適合な言動や他人を思いやることがないという症状が主であり、社会生活での脱抑制、アパシー、同情/感情移入の欠如、保続的強迫的行動が早期に出現する。また、食行動異常、実行機能の障害などがある。画像では前頭葉、側頭葉の萎縮/血流低下/代謝低下がみられる。
  3. 進行性非流暢性失語症
  4. 左前頭葉の言語野の局所病変であり、発話の障害と文法障害を主徴とする。進行すると行動障害型に類似した行動・感情の障害を伴う。

3)意味性認知症

話し言葉の理解障害、物品の呼称障害を呈する。左脳の側頭葉前方部の萎縮を示す。

 

前頭側頭型認知症の現在の考え方

近年、異常に蓄積する異常タンパクの分類に基づいて分類がなされており、FTLD‐tau、 FTLD‐TDP、FTLD-UPS、FTLD-FUS、FTLD-niの5型がある。前頭側頭葉変性症の病理には、まずtau陽性のものがあり、FTLD‐tauと称される。tau陰性でユビキチン陽性封入体のものがあることも知られていたが、その異常タンパクの主成分が異常リン酸化したTDP―43であることが判明し、FTLD‐TDPと呼ばれるようになった。

 

以上、武田克彦先生に「認知症をきたす疾患」についてご講演いただいた内容を報告します。次回は、令和元年7月18日に武田克彦先生にご講演をしていただく予定となっています。

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