第23回「心的イメージ」 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第23回「心的イメージ」

平成29年6月22日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は当院リハビリテーション科の武田克彦先生。
テーマは「心的イメージ」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告します。

~心的イメージ~

(1) イメージの与える影響について

ダーウィンが進化論のアイデアを煮詰めるにあたって、描いた「樹木のイメージ」がその後の長い思考展開のたたき台になったと肯定的に見る見方があった。しかし、イメージは感覚の単なる亡霊以上のものではなく、機能的な意味はまったくないという意見もあった。

(2) イメージ研究と心的回転

10個の立方体から構成された立体図形の平面図を2つ左右に提示し、被験者にその2つの図形が同一のものかどうかを判断させ、時間を測定した。(反応時間は内的処理過程を反映する)

(3) 心的回転(研究の結果)

結果:脳内で思い浮かべて回転させているのでは?

2つの図形の向きの違いが大きくなればなるほど、異同の判断にかかる時間が長くなり、それには一次関数関係があった。この結果は心の中ではイメージを回転させているのであると解釈された。また、イメージという内的過程が実験的に扱いうることを示している。

~イメージ論争~

Kosslynらは、イメージに対して、絵のようなもの(表像)を仮定した。これに対して、Pylyshynらは絵のようなもの(表像)はなく、命題と呼ばれる抽象的な表像形式を仮定した。この2つの考えの間におきた論争のことをイメージ論争という。

~Kosslynの考え~

イメージとは、時間的空間的な推移事象であって、表像空間に形成されて処理され、知覚と処理機構を一部共有するプロセスである。また、情報の保存の構成は、長期視覚記憶と短期視覚バッファーとに分けられる。

~Kosslynらへの反論~

絵のようなものをいちいち考えられると脳の中に膨大な容量が必要となり非効率的であり、内省はまったくあてにならないという意見がある。そしてイメージの定義とは、内的表像が言語命題で1つしかない(絵のようなものはない)と考える方が優美であるとしている。イメージ実験自体が本来的に(暗黙のうちに)教示や知覚実験から予測されるような要求特性を持っており、これらが結果に影響を与えると考えられる。

~視覚と視覚イメージについての支配的考え~

最近の実験研究から、イメージが視知覚と相互作用し、脳の重複する部分が活性化することが明らかになっており、視知覚の過程とイメージの過程は同じ脳機構を用いていることがわかってきている。また、脳損傷患者ではイメージと視知覚の両方が平行して障害される例が多いと言われる。

~視覚失認における視覚とイメージ~

視覚レベルで健常な能力はイメージでもやはり健常である。失認であれば対象をイメージしての描画や細部の記述ができない。また定位の障害があれば、例えば家の近所の良く知ったはずのランドマークの位置などがわからなくなる。以上のことから視覚とパラレルなイメージの障害が認められる。

Luncheon seminar の様子

以上、武田克彦先生に「心的イメージ」をテーマにご講演頂いた内容をご報告します。次回は平成29年8月10日にご講演をして頂く予定となっています。

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