第19回「体性感覚」
平成29年3月9日に桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は当院リハビリテーション科の武田克彦先生。
テーマは「体性感覚」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告します。
~体性感覚とは~
体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚などの表在感覚(皮膚感覚)と、関節、筋、腱などに起こる深部感覚から成ります。表在感覚は表面の感覚であり、深部感覚は体の内部の感覚を言います。表在感覚には触覚・圧覚・温冷覚・痛覚、深部感覚は運動覚・位置覚・振動覚などがあります。
~中心後回とは~
中心後回は、大脳皮質にある脳回の一つで中心溝のすぐ後ろに位置しています(ブロードマンの脳地図:3・1・2野)。中心後回に体性感覚野があり、感覚受容器から得た情報を知覚しています。その具体的機能としては空間認知、刺激の強弱、形態・重さ・かたさの類似を認知するといわれています。
~中心後回と感覚障害~
中心後回と感覚障害については、まだわかっていないことが多く、中心後回に限局した脳梗塞症例の検討が必要であり、検討をしましたので症例報告をします。
~症例の検討方法~
【方法Ⅰ(基本的な感覚)】
触覚・温痛覚・位置覚・振動覚を調べる。
【方法Ⅱ(中間な感覚)】
①重量覚(同じ大きさ・材質の分銅のうち2つを、1つずつ掌にのせ重さが同じか・異なるかを答える)
②触覚定位(手背・手掌の1点を先端が鈍の棒で刺激し、その部位を対側の示指でさす。)
③二点識別覚(ノギスを手背・手掌に距離を変えて提示。2点として判断できる最小距離を測定。)
④形態の識別(異なる形の積み木を握りその形態を答える。わからない場合は、2つずつ握らせその異同弁別を行う。)
⑤材質の識別(円盤に素材を張り、その1つを標的刺激として提示。標的を含む3つを経時的に提示し、標的をあてる。)
【方法Ⅲ(複合的な感覚)】
触覚呼称(物品を握らせて呼称させる。)
~検証結果~
~考察~
・前方にある3野が障害されると、感覚障害が重度に認められる。
・後方の2野が障害されると、感覚障害は軽度に認められる。
・視床から中心後回を結ぶ回路の障害では、半身の感覚障害を生じるが、中心後回に限局された障害では、身体部位の中でも尺側・橈側に偏って症状が出現する場合がある。
~中心後回の細胞構築的領野の生理学的意味づけ~
Mountcastieらのコラム説:
前方は筋・皮膚の知覚、後方は関節覚の知覚をしている。
岩村らの階層説:
前方は触覚・痛覚など基本的感覚、後方は形や識別感覚など知覚しているとし、前から後ろに感覚の処理がすすんでいくとの考え方。
~中心後回の感覚情報処理~
階層仮説では、3野は基本的な感覚、1野は中間的な感覚、2野は複合的な感覚を担っていると考えられます。その結果、中心後回の前方が障害されるほど基本的な感覚が障害される為、感覚障害は重度であると考えられるといわれています。
表在感覚が障害されていなくても複合感覚などほかの感覚障害を認めるなど、乖離が生じている場合もあります。ポケットの中身がなにかわからない、見えないところのものをうまく取り出せないなどの症状は認められた場合は表在感覚だけでなく、形の認識や重量感覚・2点識別など感覚障害の精査を行っていく必要があると考えられます。
以上、武田克彦先生に「体性感覚」をテーマにご講演頂いた内容をご報告します。
次回は平成29年4月13日にご講演をしていただく予定となっています。