第14回「失認~1~」 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第14回「失認~1~」

平成28年10月13日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生(第40回 日本高次脳機能障害学会学術総会会長)。
テーマは「失認」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告致します。

-失認とは-

失語による呼称障害がないのに、ある感覚を介して対象物を認知することができない障害をいいます。視覚(視力や視野)自体に問題はなく、脳に問題があるといわれています。失認は絵の模写ができない例もあり、できた例は視力が保たれていると考えられます。

・視覚失認

失語症の呼称障害とは異なり、要素的な感覚(一次感覚)が保たれているのに視覚的に提示された物品が何であるかわからないのが特徴です。

評価方法

物品(ハンガー)を模写してもらう。
→書ける(視力が保たれている)。しかし、物品が認識できない=視覚失認を疑う。

-失認の古典的分類(Lissauer,1886)-

・統覚型視覚失認

統覚とは、知覚の一番高次にあるものとされています。形がとらえられておらず、模写、複雑な形態対象の判断が困難です。病巣はびまん性であるのが特徴です。
特徴として、模写や形状の認識が困難とになります。

・連合型視覚失認

形はとらえられていますが、名前が言えません。模写、複雑な形態対象の判断は可能です。病巣は後頭葉の連合野で認められやすいといわれています。
特徴として、模写や形の認識は可能であるも物品呼称することができません。

・その他

聴覚(語音、環境音)、触覚(体性感覚)の失認があるといわれています。

-半側空間無視とは-

半側空間無視の定義は、1979年Heilmannらにより提唱されました。それによれば、大脳半球損傷側の反対側に提示された 1)刺激を報告する、2)刺激に反応する、3)刺激を定位にすることの障害と報告をされています。
半側空間無視の検査法としては①線分抹消法(Albert 法)、②線分二等分線検査、③花あるいは家の模写、④読みのテスト、⑤日常生活の観察が挙げられます。
日常生活の中では、左側からヒトに気づかない、車いすのフットレストやブレーキの管理ができない等が挙げられます。
半側空間無視は、左半球の損傷において右半側空間無視を呈するも左半側空間無視の方が症状としては重く、また持続するといわれています。
半側空間無視の病巣として、頭頂葉・側頭葉・基底核・最近では前頭葉という説もあり、病巣は様々です。

Luncheon seminarの様子

 

以上、武田克彦先生に「失認」をテーマにご講演をいただいた内容をご報告します。次回は平成28年11月17日に、引き続き「失認(半側空間無視)」をテーマにご講演をしていただく予定となっています。

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