第13回「失語~3~」 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第13回「失語~3~」

平成28年9月8日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生(第40回 日本高次脳機能障害学会学術総会会長)。テーマは前回、前々回に引き続き「失語症」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告致します。

-古典的なモデル-
・自発的に話す・言葉の理解

発話の基礎は Wernicke野にあり、次いで弓状束を経て Broca領域に達します。そこで音声化のためのプログラムが喚起され、このプログラムが隣接する運動野の発音器官の運動を司る部分に伝えられると、口、口唇、舌、咽頭などの発音に必要な筋肉が活動します。
話し言葉の理解ある言葉が耳に入ると、その音声は側頭葉の聴覚野に伝えられます。それが言葉として理解されるには Wernicke野にいく必要があります。また、それが理解されるにはさらに左半球の広い領域が関与します。

-ゲシュビントのみかた-

言語における左半球の優位性というのは、異なるモダリティ間の急速な連合を作る能力を角回が負っているからです。例えば、物品呼称は異なるモダリティ間の急速な連合で成り立っており、体性感覚や視覚情報などの情報を角回で連合しています。子供はスプーンと言うことのできる能力を獲得しますが、スプーンから受け取る視覚や触覚の刺激とを角回で連合し、結びつけることで物品や呼称や概念形成が可能となるのです。
1995年の論文によれば「動物と人間における離断症候群」において、物品の名前をいうことの障害は言語野間、言語野と運動、感覚野の解剖学的離断によって生じる障害によって生じるものと呈示しました。他の動物種はこの連合野を発達させてこなかったことから、異なるモダリティの連合ができないと報告されています。

-古典的なモデル-
・読解・音読

読解は、文字の視覚パターンが後頭葉の視覚やから角回に伝えられ、そこで変換された情報が Wernic野に伝えられます。
音読は、角回で視覚形が引き出され、Wernicke 野でそれに対応する聴覚形と結び付けられます。書き取りは、聴覚野から伝えられた情報が、Wernicke野に伝えられ、さらに角回に伝えられます。

・純粋失読・純粋失書・失読失書

純粋失読とは、自発発語や復唱、聴覚理解、自発書字や書き取りは正常であるにもかかわらず、読字の理解だけが障害されている状態を指し、視覚野と角回が離断した状態です。
純粋失書は、話の言葉の障害、言語障害、形の描写ができないなどの障害がなく、書字の障害のみの症状をいいます。これまでの研究では、左の前頭葉・頭頂葉に障害を呈することで生じると報告がされています。
失読失書とは、自発発話や話し言葉の理解、復唱には問題がなく、読み書きができない状態を指します。左の書回の障害を呈することで生じると考えられています。

・視床失語

視床失語の中核症状は、1985年Grossonが提唱した定義によれば①比較的流暢で語の置換があり、発話は時々ジャーゴンとなる、②了解は比較的保たれる、③復唱は比較的保たれるという特徴がある。また、保続と自発発話の欠如が起こると報告をしています。

-象徴機能と失語症-

失語症において、知能が障害されているか否かは結論が出ていません。知能とは新しい問題を解決する一般的な能力を言います。知能のうち、非言語的側面(行為、描画などを含む)を指すものとして、象徴機能を使用します。失語症において、象徴機能が障害されるという考え(知能と言語を一元的に捉える)と、失語症が重度であっても、象徴機能は障害されないという考え(知能と言語を二次元的に捉える)があります。象徴機能が保持されていると推測された行為の例として、携帯電話での「!」を使用してメールを行うこと、設計図での図示が挙げられます。残存機能を活かして訓練をすることで、失語の治療を行っていくことができます。

Luncheon seminar の様子

以上、武田克彦先生に「失語症」をテーマにご講演をいただいた内容をご報告します。次回は平成28年10月13日に、「半側空間無視」をテーマにご講演をしていただく予定となっています。

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