第48回 注意機能 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第48回 注意機能

令和元年8月22日、桔梗ヶ原病院リハビリテーション研修会Luncheon Seminarを開催しました。講師は当院リハビリテーション科の武田克彦先生。テーマは「注意機能」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告します。

 

注意機能

 

覚醒度/ビジランス

ある時間物事に集中している状態。ずっと集中をすることが必要な場合もある。

 

ビジランスの低下を最初に示した研究

連続2時間の監視作業を行わせる。このとき、成績の変化は30分ごとに記録された。

針の振れがランダムに変更され、それを報告する。実験参加者の成績は、最初の30分を

経過してから顕著に低下する。その後もゆっくりと低下することがわかったが2人一組が

30分交代で行う監視作業にすると、この場合の低下はみられない。

 

注意は観察可能

  1. 注意は認知の感度の増強をもたらす。あらかじめターゲット(標的)が現れる可能性の高い位置に手がかり刺激を提示する事によって、被験者の注意が受動的に引きつけられ一時的にターゲットの検出感度が高まる。サルの脳の視覚領の神経細胞の活動を記録すると、注意を向けた刺激に対する細胞活動はそうでない刺激に対しての活動と大きく異なる。同様のことは、誘発電位とPETを用いた研究によっても確かめられている。
  2. 注意は処理速度の増大をもたらす。注意が向けられたものに対する反応は速い。あらかじめ線分などで示された位置に提示された文字を読ませると、その処理速度が速くなることが知られている。

 

注意と限界容量

もし脳が情報処理に対して無限の容量を持っているのならば、注意のメカニズムなどまったく必要ないであろう。注意のメカニズムの基本的機能ないし目的は、情報の過負荷から脳の限界容量のシステムを保護することである。

 

消去現象

ある感覚が他の部位に同時刺激を加えることにより消去するか、もとの刺激が知覚されなくなる過程を消去現象(extinction)と呼び、体性感覚、聴覚、視覚の3つの領域にそれぞれ消去現象があると考えられている。

 

触覚性の消去現象

手背を左右別々に刺激した場合ほぼ100%正答できるのに、両側同時に刺激した場合検査された回数の30%以下しか両側に触ったことを正答できなかった場合、触覚性の消去現象ありとしている。

 

注意の容量とする考えの修正

修正案1

1つめの心の過程は自動的で注意を必要としない、したがって容量の制限はなく同時に行われる過程と2つめの非自動的で容量の限界がある過程に分けられる。ただ、容量が半分なのか限界なのかは簡単には言い表せない。

修正案2 多種多様な特異的資源を持っている。この案は反証できないという難点を持つ。

 

能動的注意

いろいろな邪魔があっても、例えばスライドを見るなどに集中する必要がある。外部環境からの刺激を抑制すると言うことがある。この能動的注意を担うのは、おそらく作動性の実行記憶であるとされている。

 

前頭葉と注意

不必要な刺激に対して、眼球運動を抑制するのに前頭葉が重要な役割を果たす。StroopTestの失敗は前頭葉の患者に多い。前頭葉の損傷によって脱抑制が生じる前頭葉損傷例では数唱(逆唱・順唱)の成績は他の損傷群より低かった。前頭葉損傷例ではtrail making testの成績は思考時間で評価するとpartBの成績の低下が顕著であった。Symbol Digit modality Testの成績も、到達数が少なく、処理速度が遅かった。

 

ルリアによれば

前頭葉損傷症例では、言語的指示によって注意の障害の改善が無い。

前頭葉が損傷されると能動的注意が障害されるのである。

 

CAT

1 Span

2 Cancellation and Detection Test

3 Symbol Digit modality Test

4 Memory  Updating  Test

5 PASAT

6 Position  Stroop  Test

7 Continuous  Performance  Test

注意障害のリハビリテーション

  1. 注意障害そのものに対する直接訓練

訓練を通して注意障害を補う方法(対処法)を身につけようとすること。

それを通して自己の注意障害や記憶障害を報告できるようになること。

  1. タイムプレッシャーマネージメント

「時間を十分に確保する工夫をする事」によって、自身がうまく事(物事・仕事)を処理するのに時間が掛かると自覚して、他の人にもそのことを告げ、他の日常動作に対応出来るようにする。

 

以上、武田克彦先生に「注意機能その2」についてご講演いただいた内容を報告します。次回は、令和元年9月19日に武田克彦先生にご講演をしていただく予定となっています。

 

 

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