第47回 注意機能 | 医療法人社団 敬仁会 | 桔梗ヶ原病院

第47回 注意機能

 

令和元年7月18日、桔梗ヶ原病院リハビリテーション研修会Luncheon Seminarを開催しました。講師は当院リハビリテーション科の武田克彦先生。テーマは「注意機能」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告します。

 

注意機能

 

注意機能についてWiliams James(1890)曰く「誰でも注意が何かは知っている。いくつかの同時に現れるものや思考の中から、あるものだけを入手する心の働きである。意識を局所化、集中されることが本質である。あるものに注意を向けることによって、それをより深く観察し、よりよく記憶にとどめることができる。逆に注意を向けられなかったものは、見えているのに見ることができない。」と述べている。注意機能の1つとしてCocktailParty現象がある。

 

CocktailParty現象

直接的な意味としては、カクテルを飲みながらパーティをすることである。高次脳機能として、解釈をすると1人と会話しつつ他者の会話の情報も入手ができることである。原理を説明する仮設としては、いくつか唱えられている。1つ目は、選択的注意によるもである。ある耳に集中することで他の情報を除外することである。2つ目は、感覚記憶によるものである。短期間では、膨大な情報が入力され、自由想起では、詳細な想起が困難な場面においてもある一定の指定を行うことで詳細まで想起することが可能となる。これにより視覚・聴覚などで入手した感覚記憶の中から必要な情報を入手していると考えられる。3つ目に、フィルター効果である。1つ目に類似しているが、1つ目では、不要な情報は完全にカットされてしまうが、今回は必要な情報以外も通過させている。また、複数のフィルターを通すことで徐々に必要な情報を拾っていくものである。現在では、これらの仮設のうちどれが正しいものであると断言はできない。しかし、これらの効果のいずれかが働いている可能性は大いにあると考えられる。

 

Popout/Scrutinizing

対象を捉える方法として2通りが存在している。1つ目がPopoutである。これは、母体となる情報群のうち対象をいち早く発見することである。飛び出すように見えることである。対して、Scrutinizingでは、順を追って対象を走査することである。情報群や対象によって方法を選択している。

 

注意の選択性について述べてきたが、これが失われたとき、行為の一貫性が容易に損なわれることとなる。

認知機能に影響を及ぼす注意機能として、注意の変換がある。これは、ある認知活動を一過性に中断し他のより重要な情報に反応する為である。また、2つ以上の制御に同時に注意を向けたりする分配性注意を用いることもある。

 

注意の分配

注意の分配は、例えば2つの種類の課題を同時に遂行するようなときに必要となる。その際、もっとも大事な課題へ注意が一番振り分けられる。車の運転などが良い例となる。他の課題(高い集中を要する課題)を遂行しつつ車を運転することは危険である。

 

覚醒度

ある時間物事に集中している状態。ずっと集中をすることが必要な場合もある。

覚醒が障害されると、課題を施行していると、練習効果によりその成績が上がらずにかえって低下する。課題の遂行中に突然その成績が短時間低下することもある。

 

注意とは、選択性、制御、覚醒度が重要になる。。加藤より、注意とは、「心的活動を、ひとつないしいくつかの対象に能動的に向けられること、ないしは心的活動が、ひとつないしいくつかの対象により、受動的に引きつけられること」と述べられる。

 

注意は大きく2つに分けられる

注意は、全般性注意と方向性注意に分けられる。前者の障害が全般性注意の障害であり、実際の臨床徴候としては、「ぼんやりとした(inattention)状態」「転導性(distractibility)の亢進」「運動行為の維持困難(impersistence)、反応抑制障害(disinhibition)」などが観察される。

後者の障害が半側空間無視である。

 

全般性注意障害

注意障害を示す患者は、注意の集中が悪く、何の課題であってもそれを維持して行う事が難しい。診察中何回もあくびをしたりする。違う情報がたまたま入ってくると、そちらの方に目を向けてしまって、最初に提示された課題からそれてしまう。呼び掛ければ答え、意味ある内容のことを話すこともできるが、単語を言い間違えたりする。何となくぼんやりしていて、睡眠時間も長いことが多い。

 

重度の注意障害の症状

複数の刺激のある環境で、困難なことが増える。環境内で競合する事柄が生じると、容易に気が散る。入力が限定されるか単純化されない限り、刺激に気をつけることができない。今与えられた電話番号や住所を思い出す、今言われたことを報告するなど新しい情報を保持することが困難である。

 

軽度の注意障害の症状

通常の作業に、以前よりも長く時間がかかる。日常的な業務の中で誤りが見つかるようになる。仕事において、以前より再確認する必要が出てくることで気付かれる。思考は、(ラジオ、TV、会話、電話、運転)などの他のことと競合していない方がしやすい。

 

汎性(全般性)注意障害を示す患者の観察から

不注意、転導性が向上する、何かの動作を維持することが困難、脱抑制などがみられる。

 

注意障害の検査としては、WAISの数唱課題、Trail making task Stroop task Paced auditory serial Additions Task Clinical assessment for Attention(in japanese)

他の影響が加わるため、注意だけを単独で検査するということは難しい。

 

以上、武田克彦先生に「注意機能その2」についてご講演いただいた内容を報告します。次回は、令和元年8月22日に武田克彦先生にご講演をしていただく予定となっています。

 

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