第15回「失認~2~(半側空間無視)」
平成28年11月17日桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生(第40回 日本高次脳機能障害学会学術総会会長)。
テーマは「失認(半側空間無視)」と題し、講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告致します。
半側空間無視とは
大脳半球損傷側の反対に呈示された①刺激を報告する②刺激に反応③刺激を定位することの障害とされています(Heilmann,1979)。急性期には左の大脳の損傷による右側の空間無視も見られますが、多くの場合は右の大脳の損傷による左側の空間無視の割合が大きく、重症度も高いとされています。(前回の講義参照)
半側空間無視の影響
食事の際に左(右)側の食べ物を食べこぼす、ドアを通ろうとして左(右)側をぶつける、歩いていると右(左)に寄ってしまう、常に左(右)側を見ていることが多い等の症状が見られます。
半側空間無視のメカニズム説
1. 半盲+全般性脳機能低下(batterby)
2. 眼球運動障害説(De renziら)
3. 半球間拮抗説(kinsbourne)
4. 覚醒―注意水準の一側性低下説(Heilmanら)
5. 一側へのhypokinesia説((Heilmanら)
6. 表象マップの障害説(Bisiach)
7. 半側空間無視の原因諸説
① 注意障害説
左あるいは右を確認することで人間は中心を認識することができます。しかし、注意の低下により、左あるいは右端を確認できないため中心がずれることで引き起こされると考えられています。最も有力な説であるとされています。
②眼球運動障害説
眼球運動が障害され、左側あるいは右側に充分動かないというものです。しかし、視覚的に提示されたものに対し、目の動きが制限されているわけではありません。見えないという状態ではないため、この説は支持されていません。
半側空間無視に類似した現象
① 消去現象
特定に提示された場合の認識は可能ですが、同時刺激を与えられた場合、もとの刺激が知覚されず消去してしまう過程を消去現象といいます。体性感覚・聴覚・視覚の3つの領域にそれぞれ消去現象があると考えられています。これは、注意の容量が少なくなっているために起こると考えられます。この現象は半側空間無視が軽くなった状態であるとされる説もあります。
② 表象障害説
表象とは、絵やイメージのようなものを指します。花や家など、絵のようなものを思い浮かべるときに半分になってしまう現象と考えられています。
以上、武田克彦先生に「失認」をテーマにご講演をいただいた内容をご報告します。次回は平成28年12月15日に、「バリント症候群」をテーマにご講演をしていただく予定となっています。
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